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国立新美術館
国立新美術館


「旅」国立新美術館

展覧会は終了しました。

旅は芸術家にとって、創作の刺激となるばかりでなく、貴重な知識習得の機会であり続けてきました。とりわけ海外への旅を通して、多くの芸術家が未知の技術を習得し、新しい見方を獲得しています。


文化庁芸術家在外研修制度40周年記念

「旅」展 トークの会
第1回2007年12月22日(土)午後1時30分より
諮問委員:本江邦夫(府中市美術館館長)
出演作家:奥谷 博、最上壽之、池田良二、池田宗弘、遠藤彰子、柳澤紀子、福島瑞穂
第2回2007年12月23日(日)午後1時30分より
諮問委員:武田 厚(美術評論家、了徳寺大学教授))
出演作家:今井信吾、大成 浩、櫃田伸也、谷中武彦、北久美子、星野美智子、相田幸男
第3回2008年1月19日(土)午後1時30分より
諮問委員:田中通孝(武蔵野音楽大学教授)
出演作家:一色邦彦、絹谷幸二、田村能里子、久野和洋、内田あぐり、石井武夫、畠中光享
第4回2008年1月20日(日)午後1時30分より
諮問委員:大谷省吾(東京国立近代美術館研究員)
出演作家:馬越陽子、原 健、峯田義郎、舩坂芳助、相笠昌義、河内成幸、島谷晃

Report: 2007 12/23(日)第2回 トークの会

今井 信吾《音の無い風景・25年・永代橋》
派遣先:フランス 1976年度・1年間
今井 信吾
独立美術協会会員・多摩美術大学教授
1938年姫路市に生まれる。
1963年東京藝術大学油画科卒業。1965年東京藝術大学院修了。

「音の無い風景・25年・永代橋」
油彩・キャンパス

一番の難関は、国内での選考試験を突破するよりも、パリならパリの研修先の許可書(容認書)の一札を取り込むことが大変な事で,私は友人のパリの国立美術学校の教授が引き受けてくれました。フランスでは油彩画の技術と住んでいる風土との関係についてという漠然としたテーマで留学しました。四季を通じてパリに過ごした事、四季を通じて生活しえたということが大変な経験であった。この絵は古い絵の焼き直しで、25年前の永代橋の娘と静物の絵に、今の成人した二人の娘を描いています。娘の成長が私の旅であったと思っている。

櫃田 伸也《塔》
派遣先:フランス 1979年度・1年間
櫃田 伸也 東京藝術大学教授、名古屋市文化振興事業団評議委員、名古屋市郡市景観賞選考委員
1941年東京に生まれる。
1966年東京藝術大学大学院美術部油画専攻修了。


「塔」 油彩・キャンパス
山の上に山が連なって、また山がある。五重塔とか三重塔のイメージ、仏教の仙人が住む理想の蓬莱山の風景を「旅」に描いて見る。ノアの洪水、バベルの洪水、天を目指して破壊されて行く、時代の抱えている不安、形の上で縦長に積み重なる。絵を描いている時、形を探す時、輪郭線を探すわけです。国と国との境目の輪郭線も奇妙でそういうものも取り入れました。研修生でベルギーやドレスデンの日帰りは、国境は厳しい状態でした。デッサンを見るのがテーマでドガー、マチス、ダビンチを度々見ました。色々な意味で輪郭線は面白く難しい問題も含んでいて、そういうことを積み重ねて勉強したつもりです。

大成 浩《「陽風」 No.5》
派遣先:アメリカ・イタリア・ドイツ 1979年度・1年間
大成 浩 国画会会員・日本美術家連盟委員常任理事
1939年富山県に生まれる。
1965年東京藝術大学院彫刻研究科修了。


「陽風」 No.5 石彫
我々が生きている空間の緊張の極致が円であり、全ての形が円の中に包含されていると思っている。在外経験はユーゴスラビアにコンペで選ばれたのが29歳で、初めての経験でした。文化庁の研修生ではアメリカのニーヨークを中心にカナダの国境や大きな石を出す山のスケールに感動したり、コロンビア大学では講師をしました。その後イタリアでの仕事は横浜に荷揚げして発表しました。大事な事は感性の一部が客観性の中に自分があるのだと、感覚的にも社会的にも感じた事です。40年前の考え方は歴史を作って行く上で大事なポイントでした。彫刻と自分が生きざまを平行させて行くのかを考えながらやっています。

谷中 武彦《南からの風》
派遣先:イタリア 1982年度・1年間
谷中 武彦 日本美術院特待

1943年中国黒龍江省チチハル市に生まれる。
1970年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。

「南からの風」 岩絵具、墨、麻紙
私はローマに行ってきました。最初の壁はどこに住むかということで、大学茶道部の先輩の関係での宿舎は、ご主人が大学の先生、奥様が小説家部屋は、ただと言うことで、これは素晴らしいと思ったのですが。私の部屋はキッチンのわきのメイドが使う部屋でして狭く、2週間、ほどでした。今度は部屋から法皇様のミサが見える、鐘の音も聞こえる、ところで、これがローマと勉強が始まりました。各地を見たり学校に行ったり、色々なものを見たり食べ物にも感動しました。この作品は古い写真とかスケッチとかピノキオや玩具、貝殻、地中海で構成して、“真実の口”「ローマの休日」で出てくる、風が吹いて暖かい雰囲気を出して見ました。

北 久美子《風》
派遣先:スコットランド・オランダ・フランス 1990年度・特別派遣
北 久美子 二紀会会員・文部大臣賞受賞

1966年浪速短期大学(現・大阪芸術大学短期大学)卒業。

「風」 油彩、アクリル、キャンパス
天安門事件が起こって中国からスコットランドとオランダ、フランスに研修先を変えました。スコットランドでは13世紀のお城には沢山の部屋、数え切れない飾られた絵でした。テーマは植物園と動物園を見てまいりました。と言うのは、私の絵は植物をいっぱい、動物や鳥も描いています。それぞれの国の植物園と動物園を通して文化を考えたい、という思いでした。寒々としたネス湖はネッシーが出てくる暗いイメージ、エジンバラは大人の街で植物園も動物園も大人、ロンドンは大きな動物園、そういうイギリスを、日本では味わえない環境をすごしてきました。

星野 美智子《記憶する薔薇・探索の旅W》
派遣先:アメリカ・アルゼンチン 1990年度・特別派遣
星野 美智子 国画会会員
1963年東京藝術大学美術学部絵画科油絵専攻卒業。

「記憶する薔薇・探索の旅W」 リトグラフ(ウォーターレス技法)、紙
私にとって旅とは、生きている継続時間のベルトから一時降りて人生を一休みする隙間、視点だけで漂い考える貴重な空間を生み出してくれる、よりリアルな時間、です。特に海外研修の一人旅は、風になったように自由で開放感に満ちたものでした。今よりも危険であった頃のニューヨークと英語は通じない南米が研修先でしたが、自己紹介のために携帯していた作品のお陰で「同行2人」の旅でしたので、言葉は充分なくてもそれなりの対応をして頂けて、孤独に陥ることなく実り多い長旅が続けられました。作品は、時間・空間を超えた視点で抽象的に表現しようと試みているものです。

相田 幸男《souvenirs de l'ouest・・・ルネッサンスへのオマージュ》
派遣先:フランス 1992年度・1年間
相田 幸男 独立美術協会会員、北海道教育大学教授
1948年福島県に生まれる。
1976年東京藝術大学大学院油画専攻修了。同油画研究室研究生。

souvenirs de l'ouest・・・ルネッサンスへのオマージュ」 油彩・キャンパス
今夏、アレッツォを中心としたピエロ・デルラ・フランチェスカ特別展見学を目的として渡伊した。目的は他にも、勿論、西方の「かたち」を探る旅行であったことは云うまでもない。改めて触れる形に新鮮味を覚え、現時点での集大成のつもりで制作した。「旅」とは私の中でのフォルムの探究の旅に他ならない。

本展は、将来の我が国芸術界の次代を担う人材を養成するため文化庁が実施している、
「芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)」が40周年を迎えたのを記念して開催されます。
出品にあたり、趣旨に賛同する102人の芸術家たちが、「旅」をテーマにして新作を制作しました。



主催:文化庁、国立新美術館、文化庁芸術家在外研修員の会美術部門

参考資料:「旅」展図録・他

※写真撮影は全て、主催者の許可を得て行っております。


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